tefu×people vol.2
北欧の思想からブランドを作り上げた STAMPS ・吉川さんの集める北欧家具をサブスクで。
「いいものを、分かち合う。」
(tefu) vintaging-suppliesは、家具や日用品のシェアリングサービスです。
今回ご紹介させていただくのは、北欧の文化や家具がご自身のアパレルブランドにも大きな影響を与えたという 株式会社STAMPS ディレクターの吉川修一さん。(tefu)では、吉川さんの大切に使われている私物・北欧家具を20点ほどお預かりさせていただくことに。時間が経つことや使い継がれることで価値の高まるヴィンテージ家具を集めるに至った経緯や、今の暮らしのことなどをお話しいただきました。
【profile】
吉川修一 / STAMPSディレクター
1965年東京生まれ。茨城育ち。大学卒業後、数社のアパレル企業で営業、マーケティングと店舗開発に携わる。国内外のファッションとものづくりに触れた経験から2013年株式会社スタンプスを設立。オリジナルブランドの制作ディレクションからインポートブランドのセレクトまで手掛ける。
きっかけは、北欧の文化。
華美ではないけど、生活に根ざしているデザインの在り方に惹かれました。
● アパレルのお仕事をされながらインテリアにも興味を持ったということですが、はじまりはどこにあるのでしょうか?
「きっかけは、以前働いていた会社の代表がアンティーク品や家具を集めていたことですね。アパレル会社員時代に、服という切り口からフランス、イギリス、イタリアを中心にたくさん海外をみて回りました。
当時は「ライフスタイル」という言葉もまだあまり出回っていない時代。どうしてアパレルをしながらこんなに家具や雑貨を集めるんだろうと不思議に思っていましたが、今想うと、ブランドのフィロソフィーを表現する手段だったんだろうと理解できました。」
●そこから北欧家具に惹かれるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
「北欧がまだ全然注目されていなかった2005年ごろ、デンマークにあるアンティークディーラーに初めて行った時に、当時ウェグナーのベアチェアが15万円くらいで売っていたのを見つけました。今は300万円くらいするものになっているのですが、古い物が価値を落とさず、むしろ価値が上がっていくということが衝撃でした。初めてのヴィンテージ家具は、その時購入した、今でも使っているヨルゲン・ガメルゴーのランプなのですが、今でも全く飽きることがありません。帰国してからというもの、その北欧の訪問をきっかけに家具ももちろんですが、それより北欧そのものがどこか引っかかるようになって。」
●北欧が全然注目されてなかったというのは今や考えられないですよね。
「そうなんです、そのくらいからマリメッコやイッタラといったちょっとした北欧ブームがきました。それらって、全部フィンランドから生まれているんですよね。
そのころに、ヨーロッパの他の国や展示会も行ったけれどなんとなくピンと来るものに出会えたことがなかったのですが、それでもずっと自分のどこかで北欧が気になり続ける存在だったので、もう、自分でフィンランドに行ってみようと。」
「初めてフィンランドを訪れた時、ここはやっぱりヨーロッパの中でも他とは違うすごくいい場所だって思ったんです。イッタラの工場とか、作られていく工程も見て回っていくうちに、この土地で作られているものは華美ではなくて質素なんだけど、その中にしっかりとデザインがある。
その文化が、家具一つをとっても国民みんなの生活の中に根付いていると感じたし、自分達の国のものを愛する風習があるところを見せつけられたという感覚でした。」
本当の「生活の豊かさ」を感じる、時間が経っても色褪せないものづくりがしたいと思うように。
「そのあと、帰国するとすぐにかもめ食堂を見たり、雑誌等で情報を集めているうちに、昔作られたものが今でもここまで変わらずに生活の中で生き続けていることがあるんだ、と衝撃を受けたんです。気づいたらどんどんフィンランドの虜になっていて、海外に行く時には必ずと言っていいほど、経由地で立ち寄るようになりました。自分自身の考えていることの確認も含めて。」
● 変わらずに生き続けているデザインとのことですが、逆にフィンランドにおいて”変化”を感じることはありましたか?
「訪れる日本人の話なのですが、ある時からフィンランドを歩く若い日本人カップルが増えたんです。彼らは、ヴィンテージショップや雑貨屋を歩いて回っていたのですが、ファッションのもつ煌びやかな物を買いに来ているというよりも、この土地の文化を感じながら、本当の生活の豊かさを探しに来ているように見えました。
そうやってずっと彼らを見ていくうちに、フィンランドには “今の日本人が忘れてしまっているもの” がある気がしたんです。
変化し続けることを強く求められていた時代、永続性や、普遍性という考え方を忘れているのではないか、と。」
●「永続性」、「普遍性」 これが生活の豊かさになると考えたということですか?
「そうですね。アアルトやカイ・フランクも、みんな貧しさの中から生まれたデザインというか、自分の一番近くにある地を生かし長く愛されるものを作っている。
ちょうどその頃、STAMPSのブランドの立ち上げをしていて、伝えていきたいことを漠然と考えている中で、ライフスタイル というものを軸に服づくりを考えるようになりました。北欧の家具や小物のように、長く近くにあっても飽きのこないデザイン、生活の中に馴染む「道具」としての服、時間が経っても変わらず愛されるもの。今でこそ、長く使えるものづくりが少しずつ注目されてきたように感じますが、当時は日本では変わっていくものが目立っていく時代でしたから。」
●そのころから、家具を集めるように?
「家具自体、確かにこの頃からよく買うようになりましたね。ブランドに込めた思いと同じ思想を持つ家具を使用して、自分たちの大事につくった服を見せていきたいということもあります。家具と服では、用途は異なるけれど、持っている思想の部分を引き継いでいく。見た目は地味だけど、しっかりと思想のあるものづくりに、自分自身が常に正されていると感じます。」
好きなものに囲まれて過ごす時、ありがたさを感じます。
●最後に、ご自身の「好きな家具と一緒に過ごす生活」、改めて 思うことはありますか?
「最近の休日は、ものを買ったりするというより、自分で好きなものを集めた空間で “何もしない”ことを目標に過ごしていますが、一番近くに置いておきたいものだけに囲まれて過ごしていることへの ありがたみを感じています。建物も家具も、長く使い継がれているものにはしっかりと人の温もりみたいなものがありますし、効率だけを重要視して作られたような建物ではないところで過ごしていると、 “いちいち” と感じるような不便さまでも、全てが愛おしくてしょうがない。時間が経っても作り手の想いを感じる「色褪せないもの」を守っていきたいです。」
デザインの魅力だけでなく土地や文化、受け継がれていくものの背景まで考えながら使われてきた大切な家具。吉川さんのものづくりのように「本当の豊かさ」を求めてシンプルである選択こそ、今の私たちの生活に足りないことなのかもしれません。
良い家具と住むことの豊かさや、価値あるものを分かち合い使い継ぐ価値観を、吉川さんの家具を通して、お試しください。
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