【北欧デザイナーズ・インタビュー】 vol.1:ボーエ・モーエンセン
北欧ビンテージと呼ばれる家具は、そのシンプルでモダンなデザインと、機能性、そしてふんだんに使われた木のぬくもりと素材感を感じられる、主に1940年代〜1970年代にデザインされた家具のことを言います。
この20〜30年という短い間に、数多くの名作家具が誕生しました。
でも・・・そもそも北欧ビンテージって何がすごいの?何がどういいの?
この北欧デザイナーズ・インタビューシリーズでは、この黄金期に活躍し、名作家具を作り出したデザイナーのことを、楽しく知ってもらい、北欧ビンテージの面白さをお伝えしていきます。
北欧ビンテージを代表するデザイナーたち
北欧ビンテージを代表するデザイナーといえば、
- 北欧モダンデザインの父:コーア・クリント
- 学者肌のデザイナー:オーレ・ヴァンシャー
- 庶民の暮らしの理想主義者:ボーエ・モーエンセン
- クラフトマンシップの極み:ハンス・J・ウェグナー
- 独自の審美眼:フィン・ユール
などなど、たくさんいます。
第一回である今回は、当時でも高価なものであったデザイン家具を、より多くの人が買える・使えるように、と活動されていた、ボーエ・モーエンセンさんについて知っていただきたいなと思い、tefu編集部のササダがインタビューしてきました!
サ) モーエンセンさん、こんにちは。
モ) こんにちは。
サ) モーエンセンさんは、北欧家具デザイナーを代表するお一人でいらっしゃいますが、その中でも、もっとも一般家庭や人々に寄り添ったデザインを考えられていたそうですね。
モ) そうですね。FDBモブラーという、生活協同組合の家具ブランド部門の責任者をしながら、活動していました。私が入る前からも、FDB(生活協同組合)は家具などの日用品を作っていましたが、決してモダンとは言えないデザインで・・・より多くの人に使ってもらうためには、モダンで、実用的で、低価格な家具の開発が必要でした。
サ) モーエンセンさんの実践された、モダンなデザインとはどんなデザインですか?
モ) 「リ・デザイン」という手法によるデザインを実践してました。私の師であり、今では「デンマークモダン家具デザイン(デニッシュモダン)の父」とも呼ばれるコーア・クリントさんが提唱したデザイン方法論です。
サ) 「リ・デザイン」とは、どんな方法論なのですか?
モ) その名の通り、はるか昔につくられた伝統的な家具を時代に合わせてより洗練されたデザインにしなおすことです。詳しくは、元祖に聞いてください(笑)
サ) では「リ・デザイン」については、今度コーア・クリントさんにインタビューしに行きます!
実用的で低価格、という点ではどんなことを実践されていたのですか?
モ) 私がFDBにいたころは、戦時中ということもあり物資が不足していました。
なので、高価な張り物は避けて、安価でありながらも長時間座れるような椅子をデザインしました。例外なく、木材も不足してたので、それまでよく家具作りに使われていた高級な木材は使えなかったんです。そこで、国産でまかなえるビーチ(ブナ)材を使いました。でもそのおかげで、安く、いい家具を作ることができましたね。
サ) その時に作った椅子はいつの時代の家具を「リ・デザイン」したのですか?
モ) この時のデザインのルーツは18C頃にイギリスで使用されていた「ウィンザーチェア」や、19C頃のアメリカの「シェイカーチェア」にあります。
このビーチ材の特性を活かした生産方法に適していたのが、その二種類の家具のタイプでした。
サ) tefu vintaging-suppliesの商品にある「シェイカーテーブル」も、確かにビーチ材でできていますね!
そもそも、「シェイカー」ってなんのことを指しているんですか?
モ) シェイカー教徒のことです。
サ) 教徒たちによって作られた家具があったんですね。その家具の特徴はなんでしょう?
モ) シェイカー教徒は、キリスト教の一派で質素で倹約的な生活を信条としていたので、家具も狭い部屋などにも適した合理的な作りになっているんですよね。
シンプルで機能的、それこそがシェイカー家具を「リ・デザイン」した理由です。
サ) なるほど!では実際にシェイカーチェアを「リ・デザイン」した作品はどちらでしょうか?
モ) それが私の代表作とも言える「J39」です。シェイカーチェアをよりシンプルに、さらに機能性を追求して「リ・デザイン」しました。
サ) 「J39」といえば今ではデンマークで「庶民の椅子」という愛称で親しまれるほど国民的な椅子になってますよね。
販売され出した時はさぞかし大ヒットしたのではないでしょうか?
モ) それが当時はそうでもなかったんです・・・FDBとともに私は庶民のための家具づくりを行ってきましたが、その庶民のもとへ届くまでには時間がかりました。
そこで行き詰まりを感じた私はFDBモブラーを辞め、フリーランスになることを決意します。
サ) そこが転機になったのですね!
モーエンセンさんのFDB以後の作品は、それまでの作品とはかなり異なるテイストのように感じます。特に、名作「スパニッシュチェア」は革張りで高級感がありますね。
モ) 確かに、FDBの前後で私の作品は方向性違うように感じられるかもしれませんね。
しかしこの「スパニッシュチェア」もしっかりと「リ・デザイン」の手法を踏襲しています。スペインで昔から使用されていた椅子をもとにオーク材と牛革というこれまでとは違う素材を使って仕上げました。
サ) それまでとは異なる素材にもチャレンジしたのですね。フリーランスになってからはどのような家具を手がけたのですか?
モ) 様々な会社から依頼を受けるようになり、工場で量産可能なデザインの家具やカラフルな張地のデザインの家具なども手がけましたね。デザイナーとして新たな方向性を見つけることができたと思います。
サ) なるほど!
家具製作の環境や協力した人々が変わっても、それぞれの家具に「モーエンセンらしさ」を感じられるのは「リ・デザイン」の手法や理念が一貫しているからなのかもしれませんね。
サ) 今回は、庶民の暮らしの理想主義者:ボーエ・モーエンセンさんにお話しをうかがいました。tefu vintaging-suppliesも、実は「いい家具と共に暮らす」ことをもっと広く、身近にするために、始まったサービスなんです。
モ) そういう点では、私と共通の思想を持っていますね。素敵な活動ですね。私の家具も、もっと多くの人にその良さを知っていただけたら嬉しいです。ありがとうございます。
サ) こちらこそ、ありがとうございました。
※インタビューは全てフィクションです。内容は、様々な文献の情報をもとに構成しております。